最高裁判所第二小法廷 昭和37年(オ)445号 判決 1966年4月22日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中山与三郎の上告理由一について。
論旨は、原審が唯一の証拠の申出を却下したことの違法をいうが、何をもつて唯一の証拠というのか具体的に主張していないし、記録上所論違法を疑うべき点もないから、論旨は採用できない。
同二について。
罹災都市借地借家臨時処理法二条により設定された借地権は、その登記または地上建物の登記がなくても、その設定されたときから一〇年間、その土地について権利を取得した第三者に対抗しうるものと解するのを相当とするから(昭和二七年(オ)第一四三号、同三〇年一〇月一八日第三小法廷判決、民集九巻一一号一六三三頁参照)、右に反する原審の法律解釈適用は誤つているといわねばならないが、本件にあつては、土地占有権原として従前の土地の借地権に対応する仮換地上の使用収益権の存否が争われているところ、右仮換地上の使用収益権が上告人に存しないとする原審判断が後記のとおり是認される以上、結局、原審の前記違法は判決の結果に影響を及ぼさないものといわねばならず、論旨は採用するに足らない。
同三について。
論旨は、原審の専権たる証拠の取捨判断、事実の認定を非難するにすぎないから、採用できない。
同四について。
上告人が土地区画整理の施行者に対し所論借地権の申告をせず、本件仮換地につき施行者による使用収益部分の指定もなされていないことは、原審の認定判示するところであり、従つて上告人に本件土地を占有する権原がないとした原判決の判断は、首肯できる(昭和三四年(オ)第八四二号、同四〇年三月一〇日大法廷判決、民集一九巻二号三九七頁参照。)よつて、これに反する論旨は採用できない。
既に施行者に対する権利申告をしているとの所論は、原審の認定に反することをいうものであつて採用できない。また、従前土地に対する借地権者が右借地上に登記ある建物を所有している場合には、借地権の申告がなくても施行者は仮換地上に使用収益部分の指定をすべきであるから、右権利申告がなされていないからといつて直ちに仮換地上の占有権原がないとはいえないとする論旨は、独自の見解にすぎないものであつて、採用できない。
よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)
《当事者》
上告人 田中酉二
右訴訟代理人弁護士 中山与三郎
被上告人 萩原君彦
右訴訟代理人弁護士 丸山勇之助 町田 繁